健康保険証について、河野太郎デジタル大臣は2022年10月13日の記者会見で、突然に、令和6年度秋をめどに廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替える方針を示しました。
この方針は、重大かつ深刻な悪影響を国民に与えるものでした。第一に、国が、健康保険業務を担当している市区町村と協議せず、市区町村の業務である健康保険業務の変更を迫るものでした。本来、国が市区町村と十分に協議した上で、方針を決定すべきであるにもかかわらず、市区町村とまったく協議をしていなかったのですが、これまで、このような乱暴な政策決定は一度として行われたことはありませんでした。憲法が保障する地方自治の重大な侵害と言わざるを得ません。
第二に、健康保険法の改正なく、保険医療機関及び保険医療養担当規則という省令で、保険医療機関に対して、オンライン資格確認に応じること及びその体制の整備を義務付けるのは、法律の根拠を欠くものであり、憲法41条に違反することに加え、医療機関に、無駄で高い負担を強いるもので、地域医療が崩壊する恐れが大きいと言え、無謀であるとともに、愚かな政策です。
第三に、「国民皆保険」制度の下で、マイナンバーカードの取得を事実上強制するものとなっており、「マイナンバーカードの任意取得の原則」に反することはもとより、マイナ保険証に統合しない人のための書類が新たに必要となり、行政の負担が増加するとともに、利用者の混乱も生じ、「国民皆保険」制度の根幹すら揺るがすることになります。現に、紐づけミスやカードの認証不具合など、様々な不祥事が拡大していきました。
第四に、マイナンバー(個人情報)という秘匿すべき秘密情報が記載されたたカードに、個人情報健康保険という、日常的に持ち歩いて、医療機関・薬局などで示すを示すための機能を統合するのは矛盾です。介護施設などで、マイナ保険証の管理ができない問題が発生するとともに、成年後見にも重大な支障が発生しています。
第五に、マイナ保険証の利用時に求められる「同意」によって、健康に関するセンシティブな情報を含む個人のすべての医療情報が丸ごと、不特定多数の医療関係者の知り得る状態となったり、また、マイナンバーカードの識別子を用いて個人の医療情報が名寄せされたりするなど、個人情報保護という点でも極めて重大な支障が生じるおそれがあります。
そこで、この問題に危機感を持った弁護士有志によって、2024年4月、「地方自治と地域医療を守る会」を立ち上げ、活動を開始しました。これまで、本会は、自治体や医師の方々との意見交換、シンポジウムの開催を行うとともに、関係方面へ働きかけるなどマイナ保険証の撤回に向けた活動を行ってきていますが、今後は、マイナ保険証の問題に加えて、以下に示す本会の目的に沿った地方自治の充実発展、地域医療の確保のための活動を広く展開していきたいと考えています。
“1人ひとりが幸せに暮らしていくには、住民ニーズに的確に対処する「地方自治」が確立しているとともに、健康で人間らしい生活ができるよう人々を支える地域医療の体制が整っている必要があります。
しかし、昨今、これらを妨げる動きが強まっています。地方自治と地域医療を守る会は、こういった動きに対抗して、1人ひとりの願いや要求をみんなの力を合わせて実現していくことを目指しています。“
マイナ保険証問題に関して、世論を喚起し、政策転換を求めていくとともに、地方自治及び地域医療の重要性、国民の医療を受ける権利についての啓蒙活動も行っていきます。
今後、皆様の絶大の支援協力をお願いする次第です。
2025年7月
共同代表
小島延夫(弁護士/東京弁護士会)
山岸良太(弁護士/第二東京弁護士会)